3月11日の私事

時刻は午後3時少し前だったろうか。わたしはレジカウンターにいて、お客様に商品を渡したところでグラリと体が揺れた。はじめはいつもの立ちくらみだと思った。しかしそれにしては長いこと続くものだ。お客様と地震でしょうか?大きいですね。と顔を見合わせ、どちらからともなく頭上を見上げる。吊り下げライトが揺れているのだ。目の前の棚はと目をやると、ビクともせず本が落ちてくる気配はない。ひとまず店内の皆様を避難させる必要はなさそうだ。他のスタッフが地震情報を検索したところ震源地は宮城沖、マグニチュードはいくつと出ていたのか覚えていないが、数字から漠然と大地震だとの予想をする。その後、すぐにインターネットはアクセス集中でページが表示されなくなってしまった。仙台には姉妹店がいくつかある。お店の状況を想像するに落ち着かない。そうこうしている内に揺れがおさまったので、店内の避難口、火災報知器、消化器の場所を再確認して被災時の対応をシミュレート。地震が起きたらお客様に棚から離れてもらうよう誘導して避難させる。まとめると一行で済んでしまうけれど、果たして実際起こったときにスムーズにいくものかどうか。そして自分は最後だ。職務に忠実である限り何事もお客様優先なのは当然である。そうか。まさかの時は本の下敷きになるんだ。でも、本の下敷きなら悪くないかも。そう思ったら先程までの不安が嘘のように晴れていった。腹括りました。阪神・淡路大震災を大阪で経験した店長は、この(頑丈な造りの)棚が倒れるような地震が起きたら死ぬしかないやろうなあと飄々と言ってのけた。さすがだ。