じんせいのきぼう

18の頃、先輩に貸してもらったデビット・ゾペティ「いちげんさん」。読んだ当初はいたく感銘を受けて、ああ恋がしたい。などと、むやみに気持を高ぶらせたりもしたのだが、不思議なことに、数年後、文庫化したものを店頭で見かけて再読したときには、拍子抜けするほどあっさり読み終えてしまい、首をひねってページを行きつ戻りつするも、いったい自分がどこにそんなに感じ入ったかわからないのだった。*1
こんなことは、おそらく今後ないのだろう。再読する度ちがった発見をしたり、新たな感動を覚えることはあっても、物語を自分に引き寄せて、瞬間その中で生きるような読書体験は、もうしないのだと思う。熱情を失う代わりに知恵を獲得する。大人になるのはそういうことか。それなら私はもっと大人になりたい。

*1:作品を非難しているのでなく、最初の読みが誤りだった