ダニエルくん

やっぱり、ダニエルくんの写真は余計だった。ダニエルくんを連れてきたのは誰なのかな。フィギュアの合間に黒人(Black people)の青年の顔写真を挟み込むことで、意味合いが左右されるように思う。ともすれば差別の方向にシフトしかねないのではないか。というわけで、以下、作品集と野生時代の内容に触れます。ところで野生時代って昔からムックだったっけ。
その前に、あの本、超!写真集。私は、てっきり美術展の図録を想像していて、個展の前に見るべきか否かを迷っていたというのに。おーのさとしさくひんしゅーと口にするのは妙に気分が良いから文句はないけれど、作品集だからという理由で発行部数の見積りを誤った発行&発売元の罪は大きい。自分達で、あんなファンの為の本を作っておいて「※あくまでも、作品集であり、本人の写った写真がメインとなるものではありませんのでご注意下さい」(商品案内FAXより)って、あんまりだ。あの本は彼の10年の記録、というには突貫工事に過ぎるか。とにかく、まるごとセルフポートレート。彼の支持者にとって、これ以上、見たいモノもちょっとない。


大野氏のフィギュアを見て多くの人が、なんで黒人?という疑問を持つだろう。その疑問に彼は『野生時代3月号』で、こう答えている。少し長くなるが引用。
「結局”ただのリアル”を求めたんじゃないですかね。目のふくらみとか。二重の感じとか。そういうところを、ちゃんと作りたかった。そういう意味では、外国の人のほうが、(輪郭や陰影が)はっきりしているから。そこは意識してますね。でも・・・・・・フィギュアは黒人として作ってはいないんですよ。肌色にしたりもしてたんですけど、茶色にしたらすごくしっくりきて。もとの粘土は黒。だから、ちょっと茶色いスプレーをかけると、黒人の影の部分の黒く見える感じが、自然と出る。”あ、リアル”と思って。つまり、基本的に何人でもないんですよ(笑)。」
この言葉は、作品集によって裏付けられる。

  • P3:とっぱじめの粘土のフィギュア。「何人でもない」
  • P7:アフロでいかにも黒人風
  • P8:うって変わって日本の酔っぱらいサラリーマン
  • P12:大宮skだし
  • P14:帽子のバリエーション
  • P16:既に人間ではない
  • P22-23:「木の一部」になっちゃって
  • P24-25:「カブトムシ」だの「キノコ」だの
  • P28:「巣の中から」って、今度は何ですか?鳥ですか?
  • P32-33:クラスメイト
  • P38-39:全員集合
  • P42-43:Sっ気発揮
  • P44-45:グラフティ描きてー
  • P46-47:ダニエルくんの肖像。???
  • P48-49:「コイツら」。トワイライトゾーンのおともだち
  • P52-53:またお仲間をそんな危ない目に!有り体に言えば人ごみに混じれない自分の身代わり
  • P56-57:あ〜あ。閉じこめちゃった
  • P58-59:skスポットライト(一度でいいからスポットライトを浴びたskを見てみたいです)
  • P60-61:自分のステージを自分で見てみたい
  • P63:アフロのバリエーション
  • P64:ダニエルくん?

多分に大野氏にとって、おもしろい表情が黒人に似た。絵が先だという事を考慮すれば、興味を惹く対象が黒人の表情だった、という事であろう。そうして人間の顔に似せて作った物が、彼の分身となり、外へ飛び出して、意味を越える。「何にも縛られない、飛翔する心」そこにこそ、この作品集の価値があるのだ。
帯書いた人、わかってるんじゃない。なのにどうして初版の見積り、ああも甘いかなあ?それにしても近年稀に見る手抜き帯。