出会いを逃すな

角田光代がうまいのは知っていて、だからこそ手を出さなかった。放っておいても売れる作家は、つい後回しにしがちだ。良くも悪くも職業意識が読書の幅を狭めるなあと思いつつ。
やっぱり物語には希望がないとね!
ラストの展開がなくてもお話しは十分成り立つのだ。後味は悪いが、そっちのほうがリアルだし、裏表紙の内容紹介「多様化した現代を生きる女性の、友情と亀裂を描く」からも、亀裂で終わるラストが想像されて『春にして君を離れ』のトラウマを抱える身としては、そうならないように願いながら読んでいた。結果、満足です。いくつになっても対岸に橋をかける勇気を持とう。
何がうまいって構成がうまい。
子持ちの主婦小夜子の独白「私って、いったいいつまで私のまんまなんだろう。」(この書き出しは正直、辟易した。この後「小夜子は苦笑する」と続くにしても)からはじまる彼女の現在と、雇い人で小夜子と同い年の女社長葵の過去が、交互に描かれ、まるで川が合流するように2人の人生が交錯する。
何がうまいって小道具がうまい。
19歳のシルバーリング、オキシドール、ディスコのレディースデイ。これらの道具立ては、私にはちょっと世代が上なので、本当は、うまいと思う。だわね。また、運動会のビデオやカバーのない文庫本にはさまっている手紙。ただ、これらで負け犬やらアラウンドフォーティー(って本当に使うの?)やら括られるのはもったいない。幾度か繰り返される「なんのために私たちは歳を重ねるんだろう」もいいけれど、ナナコの言う「こんなところにあたしの大事なものはない」だけでも読む価値はあります。
それで、なぜか嵐が出てくるの。一文字だけ。台詞部分、一部引用。
モーニング娘。にあゆにスマップに嵐。T3にチャーリーズエンジェルに朝の連続テレビドラマ。」
この並びどうよ?この本単行本は2004年に刊行されているんですけど、2004年て確かに24時間やった年ですけど・・角田光代ってお仲間なんじゃ?と思いました。
朝っぱらからの爆弾投下に落ち着こうと思って読んだのが、結局こういうオチ。